【発達障害】そんな言葉がまだ世間に認識されていない頃、私たちは結婚しました。
西園寺しらすです、こんばんは。
さて今回から、前々から書こうと思っていた私と主人との「家庭戦争」を書こうと思います。発達障害という「個性」を持った主人との結婚、その「個性」に振り回されながらなんとか「人並みの家庭」と呼べる形をつくれた、という私の孤軍奮闘のお話です。
発達障害の専門知識的にはド素人な私ですが、発達障害でお悩みの方、発達障害のお子さまの育て方にお悩みの方への参考のひとつに、私のやらかした失敗の数々や、いろんな経験が何かしら役に立つ部分があればと願って書きますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
なお、登場人物は全て仮名です。
ただ平凡で、実直な家庭を持ちたかった
2000年の冬、私と夫は出会いました。私34歳、夫27歳の時でした。夫の見た目は、誠実そうで常識人に見えるタイプ。性格はまじめで心のきれいな人、純粋そうだという印象でした。そして私のやりたい事や好みを最優先と考え「しらすの好きにしたらええよ。」とよく言ってくれていたのを覚えています。温厚そうな物腰、朴訥とした雰囲気、派手さはまったくありませんが、結婚するなら安定した家庭を築きたいと思っていた私にはピッタリな感じがしました。
しかし変わっているな、と思えるところもありました。 例えば
「自分の興味のある事を止めどなく話すところがあった。」
「車の運転をしている時、人が変わったように前の車に文句を言いながら運転するところ。」
そういう運転中の暴言を聞いて、私は言葉ではなく怪訝な表情で「非常に不愉快だ」と彼をじっと見て訴えました。するとその視線に気づいた彼はにっこり笑って私にこう言ったんです。
「別にしらすに言うてるんじゃないで。」と。
いや、そういうことじゃなくて…。
お互いの実家にご挨拶
交際中、私は彼の実家に何度か行かせてもらいました。夫は長男で下に弟がいましたが、すでに結婚し独立していたので、現在は夫の母親と、その母親と長く交際している「山本さん」という男性と夫の3人暮らしをしていました。
夫の両親はお母さんが25歳の時離婚したそうです。
夫のお母さんと山本さんはいつも私をとても温かく迎えてくれました。しかしここでも気になった点がありました。
「お母さんの息子(私の夫)への言動が冷たい」
愛情が欠けているのか…?なんとなく違和感を感じました。
しかし得てして不安を抱えた話ほど恐ろしく順調に進むもの、私たち2人の交際は結婚を前提としたおつきあいへと発展していきました。そして夫は私の実家に結婚の挨拶に来てくれました。
私が客間に夫を案内し、テーブルを挟んで私の両親が夫と向かい合って座りました。私はお茶を入れにキッチンに向かい、お茶をのせたお盆を持って客間に戻りました。
その途中、私の姉の子供、つまり私の姪っ子(当時小学3年生)が客間の入口の端から中を覗き込み、夫の姿をこっそりと見て私に親指を立て、笑顔でgoodサインを送ってきました。私は客間に入る際、姪っ子の方にこっそり笑みを作ってそれに応じました。
夫が帰った後、姪は私のところに飛んできて言ってくれました。
「しらすちゃん、ええやん!しっかりしてそうな人!すっごいいい感じ!!」
「そ、そう?エヘヘ。そうかな…」と私。
でもなんかちょっと気になるところもあるんだよね…とは姪にはもちろん、誰にも言っていませんでした…。
私を混乱させた夫の言動
そしてついに最大に気になることが起きました。夫の実家で夕食をごちそうになっている時の事です。その日は初めて夫の弟さんにも会わせてもらいました。夫の実家は全員お酒好きで毎晩飲みながら食事をするというスタイルなんですが、夫はお酒が一滴も飲めない人だったため、どうしてもお酒が入ると夫だけ次元が違う形となりましたが、夫本人も家族もその状況に慣れているようでした。
そしてお母さん、山本さん、弟さん、私とで飲みながら談笑している最中に、夫が指で鼻をほじりだしたんです。それもコソコソ、ではなくかなり大胆に。
私があっけにとられていると、山本さんが「もう、気持ち悪いな。それやめろって。向こうでやってこいや。」と言い、お母さんも「ちょっと、ティッシュとったげて。」と、弟さんに言いました。
その夫の行為にも驚いたんですが、そのあとの夫の言葉に愕然としたんです。
私の想像の夫の言動は
「あ、ごめんごめん、つい〜〜」と笑ってごまかして鼻をほじるのをやめる、だったんですが、
夫はさらに激しく鼻をほじりながら
「鼻が気持ち悪いねん!」 と、言いました。
その返事に私の頭の中で危険を示す警報機が激しく鳴り出しました。…そんな返事があるのでしょうか?
「人前で鼻をほじるのは見てる方が気持ち悪いからやめろ。」の、返事が「鼻が気持ち悪いねん!」
その返事はおかしい。
他人を気分悪くさせた事を完全にスルーした上で、なおかつ自分の感情をかぶせてくるという…
そんな返事がこの世にあったとは!!
夫の家族との食事会が終わったあとも、そのヘンテコな返事が私の頭の中でぐるんぐるん回っていました。 彼のご家族の人はまともそうだ。(山本さんは血縁関係のない人だが。)だが本人に気になるところがある…。
これは結婚に「待った」すべきか否か…頭から湯気が出るほど考えました。
夫は「愛情不足」なのではないだろうか?
しかし当時私は34歳。今の34歳は違うのかもしれませんが、今から15年前の34歳は完全に売れ残り感が半端なく、私の親族からも「とにかく片付いてもらいたい」との焦りは十分伝わっていました。もちろん私自身も「結婚して家庭を築かないと半人前」なのかな、という世間一般的な風潮に流されて、友人もどんどん結婚していった状況の中、焦りがなかったとは言えませんでした。(今なら結婚するもしないも自分の人生、どちらもアリ!と思えるんですが)
それに結婚話はどんどん進んでいる、今さらひっくり返せない…
だいたい相手に完璧な男性を求めれるほど私は完璧な女性だろうか?もちろん、そんなわけない。私だって人にとやかく言えるほどの女性ではないではないか。
そもそもお母さんの息子に対する冷たさはなんだろう?夫は完全に母親からの愛情不足だと思う。結婚して私が愛情をもって接すれば夫も今とは変わってくるのではないだろうか…?
最初から完璧を求めてどうする!お互いが影響し合い変化して成長していく、それがそもそも“結婚”というものではないだろうか!?
ハリキッて太字で書いてみましたが、この考えは残念ながら相当甘かったです…。
夫の親族からの“洗礼”
結局その翌年の2001年、私たちは結婚式を挙げ、晴れて夫婦となりました。双方の親族、友人知人に祝福され温かく門出を祝ってもらった…と思っていました。 しかし、現実は違っていました。
式を挙げてその翌日、私たちは夫の実家から夕食をごちそうするからおいでと呼ばれていました。お母さんの弟、つまり叔父夫婦と、夫の弟夫婦も来ていて、酒盛りがすでに始まっていました。
「しらすさん、おいでおいで、ちょっとそこ席つめたって。しらすさんそこ座って座って。」と、お母さん。
結婚式でチラッと挨拶した程度で、叔父さん、叔母さん、弟の奥さんの3人とまともに喋ったのはこの時が初めてでした。
夫と私が席に着くなりその叔母さんが口を開いた。
「私びっくりしたわよ、ユウイチ(私の夫)が結婚するっていうからさぁ、ほんでどんな女の子かと思ったらえらい可愛らしい子やん?(←社交辞令バレバレ口調で)ほんまビックリやわ!私やったらぜーーーったいユウイチはイヤ!絶対無理!!何がなんでも絶対イヤ!!」と吐き捨てるように言ったのです。
私はビックリしてどんな顔をしていいのかわからずにいると、続けて夫の弟の嫁が言いました。
「私もビックリしたんですよ!まさかユウイチさんと結婚する人がいるなんて、もうあり得へんと思って!パパ(夫の弟)に結婚なんて噓やろ?嘘やろ?って何回聞いたことか!!考えられませんよね?!」と二人の女性は高らかに笑い合いました…
…それはまるで席に着くなり、2人の女性からバケツに入っている水を交合にぶっかけられ、最後にカラになったバケツを頭からかぶせられて高笑いされた、みたいな気分でした。
そして最後のとどめは苦々そうに言い放ったお母さんでした。
「…こんな子のどこが良かったんだか。」
かぶらされたバケツの下から、まだ水鉄砲撃ってくるんかい…。
私は心がズブ濡れになったまま…どんな顔をして耐えていたのか覚えていません。ただ、叔父さん・山本さん・弟さんの3人の男性陣たちの「あちゃー、それ言ったらしらすさんの立場が…」という困った顔だけは覚えています。
「ま、まぁ“蓼食う虫も好き好き”と言うくらいやからな」と山本さんがフォローを入れてハハハと酒の席の笑い事に強引に変えてくれました。
そして当の夫ユウイチはというと、一心にテーブルの上の食事を食べていました。
まるで、何も聞こえていないかのように……。